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小話Ⅱ-①

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 さてさて、今回はななたつさんは登場しない(´・ω・`)
 聞いた話を改変し、再構築した内容となっている。
 それもあって変なところがあるかもしれないが、それはそれで勘弁してやってほしい。


 そんなわけで、今回のお話がスタートする。

 主人公は、どこにでもいる平凡なサラリーマンだ。
 















 まどろみの中で、男の意識が少しずつ浮上する。
 男は、自分がいつの間にか寝ていたことを自覚した。
 何か起きなければいけない理由があったような気がしたのだが、男はそれが思い出せなかった。
 ひんやりとした冷たさを背中に感じ、男は目を開けた。
 そして目に飛び込んで来たのは、薄暗い、石で出来ているかのような天井。どうやら仰向けのまま眠っていたらしいことがわかった。
 そして周りがとても暗いことにも気づく。
 よくある電球などではなく、壁に掛けられたランタンのようなものだけが、辺りを照らしているようだった。
 男は起き上がり、周囲を見回した。
 床も壁も石で出来た薄暗い部屋だ。明かりは壁に点々と掛けてあるランタンのみのようである。まるで牢獄だ。
 だというのに、壁際に台所のようなものがあったり、壁から配管が出ていたり、ごみ箱があったり、食材が入っているかのような段ボールが置いてあったりなど、とてもちぐはぐで、男はなんだか薄気味悪いものを感じた。他にも埃をかぶった本棚、汚い金庫のような箱もある。
 男が立ち上がり、自分の身体を見回した。
 服はきちんと身に着けているが、所持品があるわけでもないらしい。普段持っているはずのスマートフォンもないようだ。
 何が何やらわからない、そんな顔をした男は、後ろ首を掻いた。
 すると突如、暗闇の奥から声がした。
「目が覚めたか」
 男はぎょっとして身構える。
 だが不思議とその声に恐怖感はない。
 それどころか、むしろ心が落ち着くかのような声色であると男は感じた。
 男はゆっくりと声のする方に近づいて行く。
 目が慣れ、段々と声の元である人物が見えてくる。
 そこには、一人の老人がいた。
 髪も髭も長く、年齢相応のように真っ白だった。少し痩せているようで、顔に刻まれた皺はその人物の経験を物語っているかのようだ。そしてその表情は、どことなく優しさを感じる。
 狼狽する男を他所に、老人は口を開いた。
「痛みはないか?」
「いや、特には……」 
「そうか。ほかに何か違和感はないか?」
 違和感どころの騒ぎではない。男は聞きたいことが山ほどあった。
 ここはどこだ? あんたは誰だ? どうやってここへ俺を連れてきた? なんでこんなことをする?
 だが喉元まで出かけた言葉を、男は飲み込んだ。老人の足が鎖によって繋がれているのが見えたからである。
「いやそれより、じいさん……その足」
 そう言って男は鎖を指差した。
「気にするな。わしよりお前に聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「そうじゃ」
 と老人は頷き、
「お前さん、自分の名前がわかるか?」
 そう聞かれ、男は呆然となった。
 ――――わからない。
 いや名前どころではない。自分がどこで生きて、何をしていたのか、思い出せなかった。
 年齢も家族も仕事も思い出すことが出来ないことに気付き、男は愕然とする。
 そしてそれらのありえなさに男がよろめくと、老人が男の手首をがしりと掴んだ。
「しっかりしろ優一」
 名前を呼ばれ、男は目をぱちくりさせながら老人を見つめた。
「優一? 俺が?」
「そうだ。お前の名前だ。思い出せんか?」
 思い出せない、けれど、言われてみればそんな名前だったような気もする。
「少々記憶が混濁しているようだが、大丈夫じゃろう」 
 その言葉に、不思議と優一は落ち着きを取り戻し、口を開く。
「なあじいさん、ここはどこなんだ?」 
 その質問に老人は首を横に振り、
「詳しくは言うわけにいかん」
「いかんって……じいさんが俺をここに連れてきたんだよな?」
 ふむ、と老人は息をつく。
「遠からず、というところかのう。理由あってお前はここにいる」
「理由?」
「そうじゃ。それにお前は気付いているのではないか、この部屋を」
「はあ……」
 その言葉に、優一は辺りを見回す。
 台所、料理器具、本棚、金庫、配管。なにもかもがちぐはぐな場所。
 だが、だが、どこかで、見た気がした。
 自分はこの部屋を知っている。
 なぜかはわからない。
 けれど優一には、そこにあるキッチンの戸棚に何が入っているのか、なんとなくわかった。たしかあの中にはしょうゆや砂糖、スライサーなどが置いてあった。
 優一はゆっくりとキッチンへと近づき、戸棚を開く。
 中にはやはり調味料と、スライサーなどの器具が入っていた。
 間違いない。自分はここを知っている。来たことがある。過去に。
 愕然とする優一の背に、声がかけられる。
「わしはこの場所を知らん。だがお前さんはここを知っているはずだ」
 そう言った老人の顔は、真剣そのものだった。何かを伝えようとしているかのような。そんな意思が見て取れた。
「……じいさんはどこから来たんだ?」
 取り出した器具を手に持った優一が、問いかける。
「来たんじゃない。わしはずっとここにおったよ」
「どういうことだ?」
 矛盾している。
 知らない場所なのに、ずっとここにいる?
 優一の頭上に疑問符が浮かんだ。
「監禁されてるとか?」
「んなわけあるか。わしは自らの意志でここにおる」
 優一は何もかも意味不明なこの状況に、さすがに溜息をついた。
「……正直、意味がわからねえ。これは夢か何かか。しかも記憶までねえ」
 そう呟いた優一に、老人が口を開く。
「帰りたいか?」
「そりゃね」
「ならば方法を教えてやる」
「は?」
 老人は立ち上がり、
「わしはお前を直接助けられないが、やり方を教えることはできる」
「やり方?」
「そう。お前さんがここから出るための方法だ」
「なんでじいさんがそんなこと知ってんだ」
 そう言った優一の言葉に、老人は少し間を空けた。
「……それが、わしの最後の役目だからだな」
「最後?」
 優一が不思議そうに問う。
「ふん、そんなことはどうでもいい」
「いや全然どうでもよくねーよ。明らかに意味深すぎるだろ」
「黙れ。一度しか言わんからしっかり聞け」
 そう言って、老人は優一に指を突きつける。
「この奥には扉がある。鍵はかかっておらんから安心せい。その先に困っておる者がおるから、お前はそれを助けるか見捨てるかを選べ。そして反対側にも扉がある。そっちにも困っておる者がおる。なんとかせい。お前にまかせる」
 老人は一気に捲し立てるとドカリと座り込んだ。
 優一は慌てる。
「ちょっと待て、他にも人がいんのか? っていうか困ってる奴がいる? なんで俺がそんなことしなきゃいけねーんだ」
「行けばわかる。わしが言えるのそれだけだ」
「意味わかんねーよ」
 頭を抱える優一に、老人は続ける。
「選ぶのはお前さんだ」
 そう言って、優一を見つめる。
 その瞳は、まるで何かを確信しているかのようだった。
 優一は数えきれないほどについた溜息をもう一度つき、
「……わかったよ。どうせこのままじゃ何もわかんねえし。やればいいんだろやれば」
 そう言って、老人に背を向けて歩き出す。
 何もかも胡散臭く、信じられないような状況だが、優一は不思議と老人の言葉を信じることが出来た。理由はわからないが、どこか他人のような気がしなかったのである。
「ちなみにあっちと向こう、どっちが先に行った方がいいとかあんの?」
「ないな。あの部屋は因果の向こう側にある場所だ。時間は関係ない」
「じいさん、頼むから日本語で頼む」
「行けばわかる。ほらさっさと行け。もうわしは何も言わんぞ」
 そう言って、老人は壁に背を預け目を閉じた。
 優一は後ろ首を掻き、
「ったく……」 
 そう口に出し、歩き始めた。
 この空間はそんなに広くない。
 横幅はおよそ4メートルほどか、点々とある明かりのおかげで向こう側にあるらしい扉が見えた。 奥行きは大体10メートルぐらいあるようで、優一が目を覚ましたの場所はちょうど真ん中辺りである。
 扉は10メートル離れた壁両方に備わっているようで、観音開きタイプとなっているようだ。ガラスは曇っているようで向こう側が見えないようになっている。
 片方の扉の前にまで来た優一は、扉に顔を寄せて聞き耳を立ててみたものの、向こう側からは一切の音がしなかった。
「不気味すぎる。そもそも因果ってなんだ。時間が関係ないってなんだよ」
 優一は自分の手が震えているのを自覚しつつも、ゆっくりと扉を押し開けていった。



※続く
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